国連世界観光機関の2025年の数値を読み解く
国連世界観光機関は2026年1月20日、2025年の年間実績を公表しました。国際観光客の到着数は1,520,000,000に達し、2024年より60,000,000弱増加、増加率は4%でした。
地域別では、ヨーロッパの訪問者数は793,000,000でした(+4%、2019年比では6%増)。アジア・太平洋は331,000,000でした(+6%)が、依然として2019年の水準を9%下回っています。南北アメリカは218,000,000(+1%)、アフリカは81,000,000(+8%)、中東は約100,000,000(+3%)で、中東はパンデミック前を39%上回りました。
2026年について、同機関は2025年比で3~4%の成長を見込んでいます。ただし、アジア・太平洋の回復が続くこと、経済情勢が良好に推移すること、地政学的紛争が悪化しないことが条件です。これらは前提条件であり、保証ではありません。
観光客の到着数と雇用を区別する
国際観光客の到着数が測定しているのは旅行であり、雇用ではありません。宿泊、飲食、交通、旅行代理店、観光施設で何人が働いているかも、季節雇用、パートタイム、無期雇用といった雇用条件も、この数値からは分かりません。
到着数が増えても、雇用が自動的にそれに比例して増えるわけではありません。企業は、稼働率の向上、技術の活用、時間外労働によって増加に対応することがあります。逆に、減少の影響は、営業シーズンの短縮や顧客層の変更によって補われる場合があります。
労働需要を推定するには、働くことを希望する国の職業別雇用統計を確認し、実際の求人と照らし合わせる必要があります。国連世界観光機関のデータが主に示すのは事業活動であり、労働市場ではありません。
米国の職業別予測を読み解く
BLSは2025~2035年の職業別予測を公表しています。宿泊施設管理者については4%の雇用増加を予測しており、2025年5月の給与中央値は69,250米ドルです。会議・コンベンション・イベント企画担当者の予測増加率は6%、給与中央値は61,160米ドルです。シェフ・料理長については7%で、給与中央値は62,470米ドルです。
これらの職業区分が対象とするのは、この業界の一部にすぎません。ページを閲覧できなかった旅行代理店担当者のほか、接客、フロント、清掃・保守の担当者やガイドは含まれていません。
BLSは、宿泊施設管理者の雇用増加を「平均とほぼ同程度」、ほかの2職種を「平均より速い」と説明しています。給与中央値はあらゆる経験水準を反映したものであり、卒業後1年目の人がいくら稼ぐかを示すものではありません。
表で職種を比較する
次の表は、BLSの数値をまとめたものです。実際に働く国の統計に代わるものではありません。
| 職種(米国) | 2025~2035年の雇用増加率 | 給与中央値、2025年5月 | 入職時の一般的な教育水準 |
|---|---|---|---|
| 宿泊施設管理者 | 4% | 69,250米ドル | 高校卒業または同等の資格 |
| イベント企画担当者 | 6% | 61,160米ドル | 学士号 |
| シェフ・料理長 | 7% | 62,470米ドル | 高校卒業後、調理教育や徒弟訓練を受けることが多い |
この表は、これらの職種のすべてで大学の学位が必要なわけではないことを示しています。入職時の教育水準は高校卒業から学士号までさまざまで、調理分野では徒弟訓練の経路も重要です。
また、入職時の教育水準が異なるにもかかわらず、給与中央値は61,160米ドルから69,250米ドルという狭い範囲に収まっています。したがって、このデータでは、学士号の取得それ自体が給与を左右する要因であるとは読み取れません。経験、施設の種類、地域もおそらく影響していますが、中央値からその詳細は分かりません。
目指す職種に応じて教育水準を選ぶ
宿泊施設管理者について、BLSは入職時の一般的な教育水準を高校卒業としています。フルサービス型の施設ではホテル経営の学士号を持つ人が好まれる場合があり、サービス限定型の施設ではホテル、レストラン、ホスピタリティの経営に関する準学士号や修了証が認められる場合があります。
イベント企画担当者では学士号が一般的な教育水準であり、イベント企画の実務経験が役立つことがあります。シェフの多くは調理プログラムや徒弟訓練を受けています。
つまり、学位取得が必ずしも最短の道とは限りません。多くの場合、経験は学歴と同じくらい重要であり、有給実習を含むプログラムは、その両者の隔たりを縮めます。
留学生にとっては、費用の計算も判断の一部です。海外での4年間の学士課程は、数か月の修了証プログラムよりもはるかに多くの費用がかかります。参照した資料では、教育水準別に修了者の収入を比較していないため、比較には不確実性があります。慎重な方法は、希望する国の実際の求人を読み、各職務で求められる教育水準を確認することです。
ホテル業のプログラムの質を評価する
次のような質問が、プログラムの比較に役立ちます。
- 実習は必修で、有給かつ指導付きですか。
- 最近の修了者は、どのような施設に就職しましたか。
- 財務管理、マーケティング、人事管理も学べますか。
- 教員には業界で働いた経験がありますか。
- 海外交換留学や海外実習の機会はありますか。
参照した資料には、ホテル業のプログラムを比較できるランキングも、教育機関別の就職率も掲載されていません。そのため、各校にデータを求め、回答者の割合、調査日、業界内就職の定義といった調査方法を確認する必要があります。
十分な指導の下で数か月間行う有給実習は、授業を1つ追加で履修するよりも多くのものをもたらすことがよくあります。より長期的に進路を決める前に、勤務時間、仕事のペース、顧客層が自分に合うかを確かめられます。また、地域の業界でそのプログラムがどの程度認知されているかも調べる必要があります。地域の雇用主に知られている資格は、最初の就職を容易にします。
労働条件を見通す
ホテル・飲食業の仕事では、夜間、週末、祝日の勤務が求められることがよくあります。観光地では季節性が強く、繁忙期の後に閑散期が続くことも一般的です。
こうした条件は、年間収入や生活の質に影響します。給与中央値だけでは、労働時間、雇用の安定性、福利厚生は分かりません。求人にこれらの情報が掲載される場合もありますが、なければ面接時に尋ねることができます。
留学生が在学中や卒業後に働けるかどうかは、留学先の国の規則によって決まります。規則は移民当局が公表しており、定期的に変更されます。例えばカナダでは、卒業後就労許可は対象となるプログラムについてのみ認められるため、入学前にプログラムの適格性を確認することが不可欠です。
データの限界を念頭に置く
観光客の到着数は危機の影響を受けやすい指標です。パンデミックがそれを示しており、国連世界観光機関自身も、2026年の予測は良好な条件を前提としていると明記しています。したがって、この業界は、成長統計では予測できない衝撃にさらされています。
ホテル業の職種の見通しも、国によって異なります。米国の予測をそのまま別の地域に当てはめることはできず、給与中央値も地域や生活費によって変わります。
慎重な選び方は、チーム管理、財務、顧客サービス、イベント運営など、ほかの仕事にも応用できるスキルを教えるプログラムを選ぶことです。これらは、ほかのサービス業でも役立ちます。この柔軟性を保つ学生は、観光業が危機に見舞われた際に別の業界へ移ることができますが、非常に限定された分野の教育ではそれができません。
カナダではどうでしょうか
カナダでは、大学、カレッジ、専門教育機関がホテル業、観光、調理の教育を提供しています。ホテル業の職種は、一般に医療や工学と同じ形では規制されていません。ただし、調理職など一部の職種には、複数の州で認められた徒弟訓練の経路があります。カナダの職業別雇用統計は、連邦および州の機関が別途公表しています。
ホテル業の専門学校は、StudyCanadaの学校一覧には掲載されていません。関連分野のプログラムは掲載されています。ウォータールー大学(University of Waterloo)の観光副専攻とレクリエーション・余暇プログラム(Recreation and Leisure)、オタワ大学(University of Ottawa / Université d’Ottawa)のスポーツ・レクリエーション経営、さらに同大学がル・コルドン・ブルーと提携して英語で提供する統合食品科学の学士課程です。実習や留学生向けの条件は、各プログラムのページで確認できます。



